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PRACTICE実務の進め方

AIエージェントに任せる前に決める「役割・権限・承認」権限設計の手順と、確かめる問い

AIエージェントに会社の仕事を任せる前に決めたい、役割・権限・承認の3つ。使ってよい情報と操作の段階、承認が要る場面の見分け方、記録と止め方まで、国のガイドラインも踏まえて、確かめる問いと一緒にまとめました。

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AIに頼む仕事が、1つの質問への答えから、資料づくり・下調べ・記録の整理といった「続きのある仕事」へ広がってきました。ファイルを読み、道具を使って、作業を自分で進めるAIを「AIエージェント」と呼びます。

AIに任せる範囲は、人が決めます。AIエージェントに仕事を任せる前に決めておきたいのは、役割・権限・承認の3つです。任せたあとに何を確かめればよいかが見えないと、使い始めるのをためらうこともあるのではないでしょうか。

誰が何を受け持つか。何を読んで、何をしてよいか。どこで人が確かめるか。先に決めておくほど、任せられる範囲がはっきりします。この記事では、決める順番を5つのステップにして、確かめる問いと一緒にまとめました。

AIエージェントとは|チャットのAIとの違い

総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」は、AIエージェントを「特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動するAIシステム」としています。ここでいう「自律」は、高度なものだけでなく、ある程度の自律性を持つものも含みます。

チャットのAIは、聞かれたことに答えを返すのが中心です。AIエージェントは、ファイルを読み、道具を使い、作業を進めます。同じガイドラインの別添は、AIエージェントが自律的な動作の中で、人の意図しない商品の注文やファイルの削除などを行う可能性を挙げています。できることが増えるぶん、できる範囲を人が先に決めておく必要があります。

当社でいう「AIパートナー」

当社でいうAIパートナーは、役割を持った複数のAIエージェントの組み合わせです。

  • まとめ役のAI: 頼まれた仕事の中身と条件を確かめ、どのAIに何を任せるかを決めます
  • 担当のAI: 調べる・書く・点検するなど、それぞれの役割の仕事をします
  • 人: AIだけで決めてはいけないところを確かめ、最後の判断をします

目的は、「誰が・何を・どこまで」を決めて、仕事を任せやすくすることです。AIの数を増やすこと自体が目的ではありません。当社が自分たちの仕事でどう使っているかは、「AIと進める仕事」で紹介しています。

三つの机に、開いた白紙の本とルーペ、白紙と鉛筆、白紙の入った二つのトレーと卓上灯が、それぞれ分かれて置かれたイラスト。
任せる仕事ごとに、役割と使う道具を分けます。

決める順番は5つのステップ

  1. 任せる仕事を1つ選ぶ
  2. 役割を決める(どのAIが、何を受け持つか)
  3. 権限を決める(使ってよい情報と、してよい操作)
  4. 承認を決める(人が確かめる場面と、止め方)
  5. 小さく試し、記録で確かめる

1. 任せる仕事を1つ選ぶ

最初から全部を任せず、1つの仕事から始めます。選ぶときは、仕事の手順と、そのあとの確認を思い浮かべながら、次の問いに答えます。

  • 手順を言葉で説明できる仕事か
  • できあがりを、人が見て確かめられるか
  • 間違えたときに、元に戻せるか

3つとも「はい」の仕事から始めると、試しながら決まりを直しやすくなります。

2. 役割|どのAIが、何を受け持つか

次に、AIごとの受け持ちを決めます。

  • このAIが受け持つ仕事は何か(1〜2行で言えるか)
  • 受け持たない仕事は何か
  • 仕事が終わったら、誰に・どんな形で渡すか
  • 迷ったとき、誰に聞くか

役割があいまいだと、同じ仕事を2つのAIがやったり、誰もやらなかったりします。人の仕事の分担で起きることは、AIの分担でも起きます。

3. 権限|使ってよい情報と、してよい操作

権限は、操作を段階に分けて決めると整理しやすくなります(当社がおすすめしている分け方です)。

  • 読む: 資料やフォルダを読む
  • 下書きする: 文書や返信の案を作る(外には出さない)
  • 社内で更新する: 社内の記録やファイルを書き換える
  • 外に出す: 社外への送信や、Webサイトなどへの公開
  • お金・契約・アカウントに関わる: 支払い・契約・申請・アカウントの設定

下の段ほど、間違えたときの影響が大きくなります。最初は「読む」「下書きする」から始め、AIごとに、どの段まで任せるかを決めます。

あわせて、使ってよい情報も決めます。

  • 読んでよい資料・フォルダはどこまでか(顧客情報・人事・経理をどう扱うか)
  • AIのサービスに入れてよい情報はどれか。個人情報保護委員会は、個人情報を入れる場合は利用目的の範囲内かを確かめること、本人の同意なく個人データを入れるときは、サービスの提供者がそのデータを機械学習に使わないことなどを確かめることを、注意としてまとめています

そして、AIに任せないことも先に決めておきます。たとえば、パスワード・暗証番号・カード番号・口座番号・マイナンバーの入力や、お金・アカウントに関わる操作は、人が行うと決めておく、といった線です。

4. 承認|人が確かめる場面と、止め方

承認する人が資料を探し直すところから始めると、判断に入るまでの負担が増えやすいです。理由や根拠を自分で確かめられるように、示す材料を先にそろえておきます。

承認が要る場面の見分け方として、当社は次の4つの問いをおすすめしています。どれかに「はい」なら、人が確かめてから進めます。

  • 取り消せない操作か
  • 社外に出るか
  • お金・個人情報・アカウントに関わるか
  • 影響が広いか(多くの人やデータに一度に効くか)

そのうえで、承認のあとの動き方を2つに分けます。

  • 人の承認のあとに、AIが実行してよい操作: 社外への送信(メール・チャット・お客様への資料)や、Webサイトの更新など。AIが準備し、人が「承認」してから、AIが実行します
  • 人が自分で実行する操作: お金の動き・契約・申請など、人が行うと決めた操作。AIには確かめるための資料の準備までを任せ、操作そのものは担当者本人が行います

承認を得ても、人が行うと決めた操作まで AI に任せるわけではありません。承認を求めるときに「何を・誰に・いつ・取り消せるか」を一緒に示すようにしておくと、確かめる人の手間も減ります。AI事業者ガイドラインも、AIの評価や判断を人が承認するときは、承認する理由や根拠を人が自分で考えてから承認する、という対策を紹介しています。形だけの承認にしないための工夫です。

止め方と戻し方も、先に決めます。

  • 様子がおかしいとき、誰が・どうやってAIを止めるか
  • 間違った操作を、どうやって元に戻すか(戻せない操作は、承認の対象にする)

(ここで書いている段階や問いは、法律で決まっていることではなく、当社がおすすめしている運用の線引きです。)

淡い青の道に立つ一つの門の手前に、白紙の束とルーペを置いた木の机があるイラスト。
先へ進める前に、いったん立ち止まって確かめます。

5. 小さく試し、記録で確かめる

決めたら、小さく試します。

  • AIが何をしたかを、作業の記録で確かめる
  • 決まりどおりに動いたか、迷ったところはどこかを見る
  • 問題がなければ、任せる範囲を一段ずつ広げる(読む・下書き → 承認のあとに実行 → 決めた範囲は確認なしで進める)

AI事業者ガイドラインも、AIの判断をあとから確かめられるよう、利用時の入出力などの記録(ログ)を残すことと、記録の方法・頻度・保存期間を検討することを挙げています。

木の机に、小さな芽の鉢、白紙のノート、青い鉛筆が置かれたイラスト。
小さく試し、記録を見ながら手を入れていきます。

役割・権限・承認を1枚にまとめる(仮の例)

決めたことは、AIごとに1枚にまとめると、人もAIも見返しやすくなります。次は、社内の報告書を3つの役割で作る場合の仮の例です(実際の会社の例ではありません)。

役割・権限・承認の一覧(仮の例・社内の報告書を3つの役割で作る場合)
役割受け持つ仕事読んでよい情報してよい操作
調べるAI社内の資料と公開されている情報を集め、要点をまとめる共有フォルダの資料まで(人事・経理のフォルダは読まない)読む・下書きする
書くAI調べた要点から、報告書の下書きを作る調べるAIがまとめた要点下書きする・社内のフォルダに保存する。社内のチャットへの共有は、人の承認のあと
確かめるAI下書きの数字と出典を、元の資料と照らし合わせる下書きと、元の資料読む・指摘を書く
人最後に読んで判断する下書きと、確かめるAIの指摘社外に出すときは、内容を確かめて承認する

決まりは「共通」と「会社ごと」に分ける

役割・権限・承認を決めたら、AIが毎回守る決まりとして書き残します。このとき、どの会社でも同じ部分と、その会社だけに必要なルールを分けておくと、あとで直しやすくなります。

(仮の例)「社外への送信は承認のあと」は共通の決まり、「見積書は営業部長の確認のあと」はその会社だけのルール、という分け方です。

ただし、書いた決まりだけに頼らないことも大切です。たとえば Claude Code の公式の説明は、決まりを書くファイル(CLAUDE.md)を「強制される設定ではなく、文脈として扱う」としていて、決まった操作を必ず止めたいときは、自動で止める仕組み(フック)や権限の設定を使うよう案内しています。書いた決まりと、道具の設定の両方で守ります。

社員向けの生成AIのルールとの違い

社員が生成AIを使うときの決まり(入力してはいけない情報・使ってよい道具など)と、AIエージェントが守る決まり(役割・権限・承認)は、別のものです。AIエージェントを使うなら、両方が要ります。

よくあるつまずき

実際の仕事で確認を求められたとき、決まりは読んでいても、目の前の操作を進めてよいか迷うことがあるのではないでしょうか。

  • 権限を広く渡しすぎる: 「とりあえず全部読めるように」から始めると、あとで狭めにくくなります
  • 承認の条件があいまい: 「大事なものは確認」では、何が大事かが、AIにも人にも分かりません。4つの問いのように、言葉で決めます
  • 決まりを直しても、AIに伝わっていない: 直したら関係するAIに伝え、「この場面ならどう動くか」を聞いて確かめます
  • 役割が重なる: 同じ仕事を2つのAIがやったり、誰もやらなかったりします。受け持たない仕事も書いておきます

立ち上げたあとも見直す

日々の仕事を進めながらでは、見直しが必要だと思っていても、記録を読み返す時間を取りにくいのではないでしょうか。

AIの機能やモデルは、短いあいだに変わります。今までの設定が、そのまま使えるとは限りません(毎月の変化は「生成AI最新情報」でまとめています)。

  • 決まりどおりに動いているかを、作業の記録で確かめる
  • 新しい機能が出たら、任せる範囲を広げるか・決まりを直すかを考える
  • 直したら、関係するAIに伝え、実際の動きも確かめる

国の検討も進んでいます。経済産業省は、事業者が AIエージェントを安全に使うための検討の場(サブワーキンググループ)を2026年9月18日に始め、ガイドラインづくりの進め方を示しました。見直す日を決めておくと、こうした変化にも合わせやすくなります。

確かめる問いのチェックリスト

  • 任せる仕事を1つに絞ったか。手順を説明でき、結果を確かめられ、元に戻せるか
  • AIごとに、受け持つ仕事と受け持たない仕事を言えるか
  • AIごとに、どの段(読む・下書き・社内で更新・外に出す・お金や契約)まで任せるかを決めたか
  • 読んでよい情報と、AIのサービスに入れてよい情報を決めたか
  • 承認が要る場面を、4つの問いで決めたか
  • 承認のあとAIが実行する操作と、人が自分で行う操作を分けたか
  • 止める人と止め方、戻し方を決めたか
  • 作業の記録を、誰が・いつ見るかを決めたか
  • 書いた決まりを、道具の設定でも守れているか
  • 見直す日を決めたか

よくある質問

AIエージェントと、AIパートナーは違うものですか?

AIエージェントは、目標に向けて作業を自分で進めるAIのことです(AI事業者ガイドラインの定義は、記事のはじめに引用しました)。当社でいうAIパートナーは、役割を持った複数のAIエージェントの組み合わせです。同じガイドラインは、複数のAIエージェントで自律的に判断し動くものを「エージェンティックAI」と注記しています。

AIエージェントに、どこまで任せてよいですか?

決まった答えはありません。操作を「読む・下書き・社内で更新・外に出す・お金や契約」の段階に分け、取り消せないもの・社外に出るもの・お金や個人情報に関わるもの・影響が広いものほど、人の確認を入れます。最初は「読む」「下書き」から始め、記録で確かめながら広げます。

承認は、どこに入れればよいですか?

送信・公開・支払い・削除など、取り消しにくく、影響の大きい操作の前です。承認を求めるときは「何を・誰に・いつ・取り消せるか」を示し、承認する人が理由を自分で考えられるようにします。

顧客情報をAIエージェントに読ませてもよいですか?

読ませる前に、利用目的の範囲内かを確かめます。本人の同意なく個人データを入れる場合は、使うAIのサービスの提供者が、そのデータを機械学習に使わないことなども確かめます(個人情報保護委員会の注意喚起)。読ませてよいフォルダと情報は、権限として先に決めておきます。

決まりを書いておけば、AIエージェントはそのとおりに動きますか?

書いた決まりは大切ですが、それだけでは足りません。必ず止めたい操作は、道具の権限の設定や、自動で止める仕組みでも守ります。決まりを直したら、AIに「この場面ならどう動くか」を聞いて確かめます。

まとめ

  • AIエージェントは、ファイルを読み、道具を使って作業を進めるAI。だからこそ、できる範囲を先に決める
  • 決めるのは、役割(誰が何を)・権限(使ってよい情報と、してよい操作の段階)・承認(人が確かめる場面と、止め方)
  • 承認は「人の承認のあとAIが実行する操作」と「人が自分で行う操作」に分ける
  • 小さく試し、記録で確かめながら、任せる範囲を一段ずつ広げる
  • 決まりは共通と会社ごとに分け、道具の設定でも守り、AIの変化に合わせて見直す

当社の「生成AI伴走支援」では、会社の仕事と使っている環境を伺い、AIパートナーと共通の決まり、会社ごとのルールを整えてお渡しします。導入後も、AIの決まりや機能の変化をまとめた定期便などで支えます。Claude Code や Codex をこれから使いたいと考えている方も、まずは今の仕事の状況をお聞かせください。

出典

2026年10月13日に確認

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